本の可能態について / 三浦秀彦 個展
本屋と展示空間が混じり合う「コ本や honkbooks」で「本」についての 展示を行った。
長い歴史を持ち身近な存在である「本」を問い直し、物質 として存在する情報の束、塊、群としての「ありよう」を再解釈し、単 に書かれた記号を読解するという行為を超えて、その時々で意味が発現 する道具/ 方法としての本の形式を提示することを狙いとした。この数年、 創作活動の源流にあることや日常の認識についての考察、 個人的な経験や気づきなどについてのテキストを書いていたが、その内容を体感的に伝達するためには、一般的な本の形式では不十分であ ることに気づき、内容に呼応した特殊な本の形式を検討し始めた。 その試行錯誤の結果、生まれたいくつかの本の形式を用いて、新たな本 のありようを示した。
これらの本の形式は、本を読むという行為自体を変性させるものであり、 文字という記号の読解を超えて、今ここでの体験が生成する意味を作り 出し、動的な思考の遊具となることを目指した。電子的な書籍や Web コンテンツなど非物質的な情報の群とも対照的で、手の中でかた ちをかえ、触覚や動作と連動して文字や図像を読み解く感触は新鮮なも のとして感じられるはずだ。
展示作品
1. Isometric Book (2023) / 紙、デジタルプリント
『作ることの詩学』、『翼島』、『庭に生まれる』、 『私と世界はどのように接しているのか』4点
平面と立体を行き来し、見え隠れする言葉、視覚的な意味を変化させ生成される景を愉しむもの。手で触れながら平行四辺形の内側と外側のあるページが連動して開閉し、立体化と平面化
を繰り返す。吹き抜けた空間に、書く(描く)者と読む者の間に不安定な視点を作り出す。
2. Diagonal Book (2023) / 紙、デジタルプリント
『呼吸・境界から』、『色温度』、『島と庭』、地形詩 3点
一枚の紙を折り、それぞれ異なった多角形のページの連なりを作る。読む者は、視点を移動させながら彫刻的なオブジェクトの各面に配された文字と像を空間的に、また非直線的に読み取ることになる。今回、自作の三篇の詩を立体化した。
3. Rock,Paper,Water (2023) / 水溶紙、水
本のページを紙の質に還元し、地形的な形状を与え触知し得るものにした。石の上に水溶紙を置き、霧吹きで水をかけるという単純な操作で、石の形状を転写した。ことばの揮発してしまったページの上でも石、紙、水が本性のまま饒舌に語っている。
4. 滑空することの独習 (2023)
/薄葉紙、糸、枝、磁石、竹ひご、透明水彩絵具
日常的な素材による空間的な素描またはエッセイ。頭の中にある簡単な「指示」に従って短時間で構成した。ここでは「本」の作用を、行為を方向づけるきっかけ、元となるものと捉えている。
5. Layered Book (2023)
/ トレーシングペーパー、デジタルプリント、植物
半透明の紙で作られ、ページをめくるごとに変奏される文字と像の重なりの変化を読んでゆく。その眺めは、常にはじまりであり、終わりであるが、変化と差異、不確かに見え隠れするものを動的に味わえる。
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1. Isometric Book (2023) |
2. Diagonal Book (2023) |
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3. Rock,Paper,Water (2023) |
4. 滑空することの独習 (2023) |
5. Layered Book (2023) |
『 モトトナル モノノアリヨウ 』
本の可能態について / 三浦秀彦 個展
会期 : 2023年 9月15日(金) ~ 9月24日 (日) 休業日 19日(火)、20日(水)、21日(木)
会場 : theca[コ本や honkbooks内]
場所 : 東京都新宿区山吹町294小久保ビル2F
企画協力 : 高橋 裕行
主催 : 帆走と滑空
『 モトトナル モノノアリヨウ 』 関連企画
トークイベント
2023年 9月22日(金) 17:30〜19:00
theca[コ本や honkbooks内]
話す人 : 三浦秀彦
ゲスト : 青柳菜摘
モデレーター : 高橋 裕行
テーマ: 作ることの詩学
コ本や webサイト: https://honkbooks.com/