聴覚的な詩としての音響作品
2020年の1月、帰郷の際に録音したフィールドレコーディング音源をもとに制作を開始した。完成形を構想せず、変化し続け現れてゆく音響的な風景を眺めながら時間を過ごした。大半は制作という言葉とはかけ離れた受動的な「聴く」作業だった。微かな手応えを受け取っては調整し、また聴く。その繰り返しで、ゆっくりと変化する植物を相手に時間を掛け景を整えてゆく園芸的作業にも思えた。いつ終わるかわからない作業だったが、今回一つのスナップショットとして切り取り定着させた。
全体像が固定された時点からアートワークの制作に取り掛かった。無作為に15枚ほどのドローイングを描き、その中から音と響き合うものを選び出した。最終的には10年前に撮影した3枚の写真とコラージをして仕上げた。 タイトルは、北緯を表している。経度は示していないので地点は定まらない。それは、地球を水平に切ったときに現れる大きな一つの円環と捉えることもできる。
この作品は、聴覚的な詩を作る試みでもある。言葉で詩を書くことは難しく、どことなく違和感を抱いていた為、音楽と接しながらもそれとは異なる体感的な詩を聴くことを介して作れないかと考えた。まだ始まりに過ぎないが、記号を超えて別の経験としての詩を目指している。
album title: 39°38′42′′N
artist : 三浦秀彦
release : 2021年 10月
label : 滑空と帆走
art work : 三浦秀彦
1. January 05:50
2. Y Line 06:03
3. maesuka 05:43
4. chouritsu 05:06
5. nagisabashi 05:17 5曲 28分