花をうつす、いきられた部屋

光と花をいけるインスタレーション作品

 

六畳の庭に面した和室に光と花をいけた。カメラ・オブスキュラ*の原理を用い、1枚のレンズのみで風景を土壁や畳の上にうつしている。レンズはフレネルレンズ*で、厚みがなくただの透明板のように見えレンズらしくないが、広い面で光を集めている。花は、毎日自宅の庭で採り、会場にうつした。黒い4つの花器は、普段自宅で使用している食器、それにいけた。作品を構想しながら、漠然と「うつすこと」と「いきられること」の2つの言葉があった。作品はその結論はなく、この2つの言葉を描いた素描のようなものである。
花や器を自分の生活からこの場所へ移す。外から光を部屋に運び映し、庭や廊下、人の像を壁や床に写す。土壁や柱は日に焼けている。それは常に文字通り露光していて、記録してその色、その質を得て今に伝えている。きっかけは、この大正期に建造された窓の多い和洋折衷の家を写真器のように感じたことではあるが、部屋自体も一つの場として様々な光景を記録していると考えるなら興味は深まる。それを単純な光学的道具で輪郭をなぞり知覚し体感できるかたちに翻訳する作業だった。|  三浦秀彦

 

 

*カメラオブスキュラ
camerae obscurae、ラテン語で「暗い部屋」の意味。素描を描くために使われた光学装置。
*フレネルレンズ
球面状のレンズを同心円状に分割して、厚みを減らしたノコギリ状の断面を持つ薄型レンズのこと。

 

 

会場 : 旧柳下邸(横浜市指定有形文化財)
会期 :  2012年6月2日- 10日
「花と器」(花と器のハーモニー 2012 in 旧柳下邸)
「ここに生ける花、こころに生ける花」参加作品