River


いつ作ったかもわからない小さな立体作品。

 

 

仕事場にあった流木とヒノキの角棒を何気なく麻ひもと銅線で沿わせてみた。それがいつだったのか覚えていない。長い時間そのモノは放置され、ある時偶然にも発見される。発見の瞬間に発想が生まれ、そのモノは意味を得る。
同一の「木」という物質であるが、一方は、流木として波間に漂い、磯や海岸の小石や砂でサンディングされ滑らかな表面となりながらも、その有機的な捻じれと成長の痕跡の湾曲を失わず保持している。もう一方のヒノキの角棒は、工業的な過程を経て幾何学的な幅5ミリ厚み2ミリの角材に製材され工作用に販売され手元に届いたもの。この出会う必然のない2つの「木」を無理に沿わすことによりひとつの流れが生まれた。初めはその意味も見いだされず放置されるのだから、作品は物質的な「生まれ」と、見いだされる「生まれ」の2度生まれている。また、置かれる場所や文脈、観る人触れる人が変われば、そのたびごとに作品は見いだされ新たに「生まれ」ているといって良い。発見されなければ無価値のものであるが、発見によって生まれる。その垂直に跳躍する創作に愉しみを感じている。工作としての即興性、発見としての偶然性。モノとしてのブリコラージュと意識としてのブリコラージュの2層があり、常に複雑に絡み合い織り込まれている。これらは、現実の物質と現象を基礎とした身体的な思考、最も古臭く原始的な方法であるが、最も確実なものである。 |  三浦秀彦

 

タイトル : River  / 川
素材 : 流木、ヒノキ角材、麻紐、銅線
サイズ : w105 x d12 x h775 (mm)
制作年 : 不詳